大分県弁護士会

(2) この点につき,控訴人Bは,Hから本件新株の発行手続に問題があること, 持株比率を変更することになることについて抗議を受けた控訴会社が,本件新 株発行に係る手続上の不備と持株比率の変更を是正する方法として,控訴人B が引き受けた本件新株のうち18万7000株をHに引き渡すことを合意した ものであり,控訴人Bは,上記引渡しまでのごく短期間B譲渡株の名義を保有 しただけで,同控訴人は,その引受け及び譲渡によって,一切経済的な利益を 得ておらず,経済的利益を実質的,終局的に取得したのはHにほかならないか ら,実質課税の原則によれば,所得の帰属先はHと認定されなければならない と主張する。
しかし,B譲渡株をHに譲渡する措置によって本件新株の発行手続の瑕疵が 是正されることにはならないことや,控訴人BからHに対するB譲渡株の譲渡 の承認に関する取締役会議事録には,B譲渡株のHに対する譲渡が,控訴人B の主張するような是正措置として行われるものであることをうかがわせる記載 は全くないことは,前記引用に係る原判決「事実及び理由」欄の「第三当裁 判所の判断」のうち,一の3に説示されたとおりであるし,本件全証拠を 精査しても,本件新株の発行に先だって,控訴会社の取締役会において,本件 新株の発行後直ちに,控訴人Bが引き受けた本件新株のうち18万7000株 をHに譲渡することを承認するなどの決議がされたことを認めることはできな いのはもちろん,これを事実上確認したことすら認め難い。
これらのことに, 本件新株発行前のHの持株比率は,9.3パーセントであったものが,控訴人 BからB譲渡株の譲渡を受けても,Hの持株比率は7パーセントに回復したに すぎなかったことをも考慮すれば,控訴会社は,本件新株の発行による持株比 率の変更についてHから抗議を受けたことを受けて,控訴人Bが,割当のとお りに控訴会社から本件新株84万株の発行を受けた上で,その中から,18万 7000株を発行価額と全く同額でHに譲渡することによって,事後的に和解 的な解決を図ったものと認めるのが相当である。
したがって,控訴人Bが,B 譲渡株の発行を受けた後,ごく短期間でこれを譲渡したからといって,同控訴 人が,これを取得し,これによる経済的な利益を取得した事実が左右されるも のではない。
そして,控訴人Bが,Hに対し,B譲渡株を発行価額と全く同額で譲渡した 結果,同控訴人は,譲渡益を現実に手にすることはなく,HがB譲渡株の時価 と発行価額との差額相当額の経済的利益を得ていることは明らかであるが,H が得た上記利益は,B譲渡株の低額譲渡により生じたものであって,Hがその ような利益を得ているからといって,B譲渡株の引受けによる経済的利益が実 質的にHに帰属するとみることはできないことは,前記(4)に説示したところと 同様である。

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